非公式CDJファームウェアでstems対応、ただし初心者は待つべき
CDJ-3000XとXDJ-AZ向けのファームウェアで、本体単体でのstems再生が可能に。ただしメーカー保証はほぼ確実に無効となり、インストールに失敗すれば機材が起動しなくなる恐れもある。
あるDJはDigital DJ Tipsに対し、Rekordboxで5,613曲をUSBメモリに書き出すのに1時間30分かかったと語った。同じPC、同じメモリで、自作のソフトを使えば1分30秒で済んだという。
公式ソフトや機材の不満を自分で解消しようとしているのは彼だけではなく、その中にはUSB準備の高速化にとどまらないものもある。CDJ-3000XやXDJ-AZ向けには、メーカーが搭載しなかった機能を追加する非公式ファームウェアが出回っており、本体単体でのstems再生もその一つだ。筆者はこの動きの背景にAIがあるとみる。優れたアイデアを持つ個人が、かつては開発チームが数カ月かけていたものを数週間で作れるようになったという。
開発者によれば、このUSBアプリはバックグラウンドで書き出しを行うため作業を止める必要がなく、複数のメモリに同時に書き込めるので、ギグ用のバックアップに余計な時間もかからない。大企業は抱えるユーザーも製品も多く、細かな不満は何年もタスクリストに積まれたままになりがちだ。ソフトを根本から作り直すには高額なコストがかかる場合もある。一方、個人なら自分が困っている点を一つ、素早く直せる。ファームウェアなら、次のモデルを買わなくても手持ちの機材でできることを増やせる。クラブのブースで主役を張る最上位プレーヤーのCDJ-3000Xでstemsが使えるのは大きい。自分では一切使わないとしても、こうした取り組みはDJが何を求めているかをメーカーに示す材料になり、今日の非公式な修正が明日の公式機能になる可能性もある。
ただし落とし穴がある。目を引く数字はすべてツールの作者自身によるもので、第三者が検証するまでは主張にすぎない。まずリスクにさらされるのはライブラリだ。キューポイント、ビートグリッド、プレイリストのすべてがそこに入っており、個人が作ってテストしただけのアプリは、Rekordboxが経てきた検証をくぐっていない。ファームウェアはさらにリスクが高い。メーカー保証はほぼ確実に無効になり、インストールに失敗すれば高価な機材が起動しなくなる恐れがある。公式アップデートで非公式のファームウェアが消えてしまうことも多い。開発者が飽きたり、本業が忙しくなったり、メーカーの法務部から警告書が届いたりして、プロジェクトごと消える可能性もある。アプリの大部分をAIが書いたのだとすれば、不具合が出たとき作者が直せるのかという疑問も当然出てくる。
最も不利なのは初心者だ。何が正常な状態か、まだ分からないからである。スクールに毎日寄せられる質問は公式ソフトに関するものばかりだ。曲がCDJに表示されない、ビートグリッドがずれる、プレイリストが見当たらない、といった具合だ。問題が起きたとき、原因が自分なのか、設定なのか、ソフトなのかを受講生は判別できず、非公式アプリが絡めば切り分けはさらに難しくなる。まずはミックスを覚えることだ。
それでもサードパーティ製アプリを試すなら、ライブラリに触れさせる前に毎回必ずバックアップを取ること。ライブラリを書き換えるものではなく、読み取って書き出すだけのアプリを選ぶこと。自分のものではない機材には、クラブのCDJも含め、非公式ファームウェアを絶対に入れないこと。そしてギグの前には、実際に使う機材でUSBメモリをテストし、公式ソフトで作ったバックアップも持参すること。