米著作権局、ストリーミング不正の調査を開始 AI音楽も視野に
意見募集の締め切りは11月23日。顧客確認やロイヤリティのクローバックといったディストリビューターのルールに加え、会場がツアー計画に使うストリーミングデータも対象になる。
米著作権局(US Copyright Office)が、ストリーミング不正の仕組みと、それを防ぎうるディストリビューターの施策について、11月23日まで意見を募っている。対象には顧客確認、ロイヤリティのクローバック(回収)、コンテンツの削除などが含まれる。自作のエディットやオリジナル曲をディストリビューター経由でリリースしているなら、まさに自分に関わるポリシーが検討対象になっている。反論コメントの締め切りは12月21日。意見募集の通知は10月7日に連邦官報に掲載された。
ブッキングの領域も射程に入っている。通知は、プレイリストへの掲載や、アーティストや会場がツアー計画の際に頼るストリーミングデータへの影響を二次的な被害として挙げ、会場選びやチケット販売など、不正がライブ音楽に与える影響についても意見を求めている。
発端は、下院司法委員会に所属するウィスコンシン州選出の共和党議員、Scott Fitzgerald下院議員だ。同議員は5月21日付の書簡で、ストリーミング不正におけるAIの役割を調べるよう同局に求めた。創作ツールとしてのAIに「本質的に問題はない」と断りを入れたうえで、問題にしているのは原資の配分だ。「AIが生成したアウトプットが人間の作品と競合すれば、本来は実際の権利者に分配されるはずの、限られたロイヤリティの原資から資金が流出する」と書いている。書簡はDeezerの数字を引いており、2025年には完全にAI生成のトラックのストリームのうち最大85%が不正だったこと、6月時点で1日のアップロードの半数超がAI生成で、その数は1日約9万トラックに迫ることが示されている。
通知がディストリビューターに問うこと
ノースカロライナ州Cornelius在住のMichael Smithは、通知が公表される前日に禁錮18カ月の判決を受けた。ボットアカウントを運用し、AI生成の楽曲を数十万曲規模でストリーミング再生させていた人物だ。通知は2024年の起訴時に主張された1,000万ドルのロイヤリティ額を再掲しているが、裁判官が命じた没収額は、双方が合意した損失額の$8,091,843.64だった。
Smithの件は分かりやすいケースにすぎない。通知が面白くなるのは、ごく日常的な運用の部分に踏み込んでいるところだ。10の論点のひとつはこうだ。「業界のどのようなポリシーや慣行が、意図せずストリーミング不正を助長している可能性があるか」。信頼できるディストリビューター、コンテンツ検証、顧客確認、ロイヤリティのクローバック、罰金、コンテンツ削除について見解を求めている。ほかにも、既知の不正情報を共有するデータベース、メタデータの標準化、法定ロイヤリティの対象外となるコンテンツへのラベル付けを問う。「無過失の差止命令による救済」にも触れ、American Copyright Protection Act of 2026とDEFEND IP Actの2法案の名も挙げている。
いずれもまだ政策になったわけではない。ただ、こうした案が採用されれば、ディストリビューターはアップロードする側により多くの確認を求め、不正と判断したストリームについて支払い済みのロイヤリティを回収する方向に動くと見ていいだろう。
業界は業界で独自に動いている。IFPIは9月14日、任意参加のStreaming Integrity Initiativeを立ち上げた。KYC(顧客確認)や情報共有など、ディストリビューター向けの不正対策の基本5項目を掲げており、発足時にはメジャー3社を含む24の企業・業界団体が署名した。通知はこのイニシアチブに言及し、不正に対して罰則を設けているディストリビューターの例として、DistroKidとTuneCoreの人工ストリーミングに関するガイダンスを引いている。
組織犯罪の線と今後
組織犯罪の線も出ている。通知は2023年のスウェーデンの報告書を「憂慮すべき」と評した。犯罪ネットワークが偽のストリームを使ってマネーロンダリングをしていたことが判明したという。NMPAのトップであるDavid Israeliteは、6月10日の同団体の年次総会で、ストリーミング不正を「国家安全保障上の問題」と呼んだ。州や地方レベルでの訴追も議題に挙がっている。
すぐに法制化されるとは考えにくい。Fitzgeraldの書簡をきっかけに行われた、演奏権団体(PRO)をめぐる先の調査には5,000件超のコメントが寄せられた。それを要約して2025年11月に議会へ送られた同局の書簡は、同局自身の言葉でいえば「新たな政策提言は含まれていない」。
音源をリリースしているなら、いまのうちにディストリビューターの人工ストリーミングに関するポリシーに目を通し、再生数の流入元の記録も残しておきたい。